五十肩(肩関節周囲炎・腱板炎・上腕二頭筋長頭腱炎・肩峰下滑液包炎・石灰沈着性腱板炎・野球肩・棘下筋腱炎・インピンジメント症候群)

世間一般に言われている五十肩は、実は疾患名ではありません。
 
肩関節周囲に痛みや上肢の挙上障害を訴えるものには、上腕二頭筋長頭腱炎、腱板炎、腱板断裂、肩峰下滑液包炎、石灰沈着性腱板炎などがあります。
肩関節に痛みや運動制限があり、上記の疾患名に当てはまらないものを、属名として、いわゆる五十肩と言っています。
また、それぞれの疾患は、別物というよりは相互に関わり合って移行していく可能性があります。
 
機序としては、加齢に伴い筋肉や腱、靱帯の弾力性および肩峰下滑液包の柔軟性が失われていくことにより、組織の変性や器質的な変化が起き、腱板機能が低下し肩関節周辺の組織に炎症が生じて発症します。

好発年齢は40~50代に多いですが、30代でももちろん発症することはあります。年齢が若いほうが治癒する期間は短い傾向にあります。
 
五十肩には、疼痛期・拘縮期・緩解期の3つの病期があり、この過程を経て治癒するとされています。
治癒するまでの期間には個人差があり、数ヶ月間で治る方、半年以上経過してもなかなか良くならない方など様々です。
また、痛みがなくなって治ったと思っていても、関節拘縮が残存し、関節可動域が発症前と比べて著しく悪くなる場合もあります。
 
狭義の意味での肩関節は、肩甲上腕関節を指します。
五十肩の治療のポイントの一つとしては、肩甲上腕関節の筋肉である腱板を治療します。腱板には、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋があります。
 
ではなぜ、腱板筋が大事であるかですが、これらの筋肉は肩甲上腕関節の安定に寄与しているからです。
腱板は、肩甲骨と上腕骨をつないでいるのですが、肩関節を動かす時、上腕骨だけが動くのではなく、肩甲骨も連動して動くようになっています。
 
例えば、肩関節を外転する際に、上腕が90°動いたときに肩甲上腕関節では60°、肩甲骨の上方回旋で30°の2:1の割合で動きます。これを肩甲上腕リズムといいます。腱板はまさにこの肩甲骨と上腕骨がスムーズに動くように影で支えている存在なのです。
 
健康な肩関節では、この腱板による働きにより、上腕骨頭と肩甲骨の関節窩は適切な位置に配置されており、肩関節を外転した時に上腕骨頭の上方への回転と下方への滑りが同時に起こることにより、インピンジメントを起こさずに上肢を挙げることが可能になるのです。
しかし、腱板のアンバランスが起き、一度でもこの安定機構が崩れると、肩関節の動かし方によってはインピンジメントを生じさせ、激痛を伴うようになります。炎症が滑液包に及べば安静時痛や夜間痛を引き起こし、日常生活を送るうえで著しい支障をきたします。
 
また他にも重要な治療ポイントがあります。
解剖学的に肩関節・上肢に行っている神経は、頸部~上背部から出ており、肩関節まわりだけを治療対象にしていると、一旦はよくなっても、またしばらくすると元に戻ってしまいます。
肩まわり、上肢を司っている大元のところの神経が、硬い筋肉組織に圧迫を受けていれば、神経走行途中の肩まわりの筋肉を鍼で緩ませたところで、時間の経過とともに元の木阿弥になってしまうのはある意味当然なことです。
よって、肩関節と頚部という一見関係ないような部位を同時に治療していくことはとても大切なのです。

一日でも早く痛みから解放され、以前の可動域を取り戻すために、当院で治療を受けられることをおすすめいたします。
また、治療中鍼のひびきが強く、耐えがたい場合には、アプローチ方法を変えることもできますので、何なりとご相談ください(^-^)